街中を歩いていて何気なくガラスに目を向けたとき、どちらがガラスの向こう側で、こちら側なのかを認識できず、自分の立ち位置さえも分からなくなってしまうことがあるだろう。この無秩序な有り様は、通常、どれが奥で手前かが整理されながら視られることで、 安定したパースペクティブにおさまってしまうが、そこに落ち着かせないようにするために私の制作は向けられていく。つまり、私が作品で求めることは、日常的なパースペクテ ィブへと整理される直前の光の状態をとらえることであり、見るべき焦点が定まらない不安定な像へと写真を導くことである。ここに、同一的な意味が反復される日常世界とは異質な様態が現れてくるのではないかと私は考えるのだ。―大島成己

© Naruki Oshima, Courtesy of Yumiko Chiba Associates