本シリーズでは、鬱蒼とした木々の中に分け入った際の、対象を目でまさぐるように視て、辛うじて認識するような感覚を表現したいと思っています。作品では、近接撮影で写した写真をデジタル上で繋ぎ合わせてひとつの全体的な「木」を作っています。そこには、木の部分を視る近い距離と全体の木を見る遠い距離といった遠近のふたつの距離感が混在し、そのふたつの距離感の振幅のなかで、「木」が曖昧に現れてくるように表現されています。それは、葉、枝、幹などのさまざまな部分に対しての手触り感の総体としてあり、「緑の木々」としての固定的な記号イメージから離れて、木々のそれぞれの部分、部分が織り成されて、集合している状態としての有り様であると考えています。―大島成己

© Naruki Oshima, Courtesy of Yumiko Chiba Associates